○渡邊直人、成 剛、福田 健(獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科)
我々が気管支喘息患者59名を対象に、カプサイシン吸入試験による咳閾値を求め検討した結果では、咳閾値が低下しているもの、正常のもの、高いものとに分かれた。咳閾値が低下していると咳嗽が出現しやすく、その咳嗽が喘鳴を誘発する原因となりうると考えられる。今回我々は咳感受性の亢進している(以下咳過敏症という)気管支喘息患者に麦門冬湯を投与することにより、その咳閾値に対する効果と気道炎症に対する効果を検討した。さらに性別・病型・罹病期間・気道炎症の程度などで麦門冬湯の効果に差異がないかを比較検討した。
カプサイシン吸入試験を行い、咳閾値が3.9μM以下に低下していた。気管支喘息患者17名。
対象患者に、ツムラ麦門冬湯9g/日を2ヶ月間以上投与し、投与前後においてカプサイシン吸入試験を行い、咳閾値を求めた。また末梢血や喀痰中の好酸球数、血清ECPを測定した。そしてその咳閾値と気道炎症に対する効果を比較検討した。さらに上記内訳によるそれぞれの効果を検討した。
麦門冬湯投与前後で、有意に咳閾値の改善を認めた。一方、気道炎症に関しては抑制傾向であったが、有意差は認められなかった。また、性別では女性により改善効果が認められ、発症1年以内の患者の改善効果は著名であった。
麦門冬湯は気管支喘息患者に伴った咳過敏症には有効な治療薬であることが示唆された。特に喘息患者が早期の患者ほどその改善効果は著名であるものと考えられた。