○馬場 錬(県立愛知病院耳鼻咽喉科)
耳鼻咽喉科領域の臨床医が取り扱う慢性咳嗽の原因疾患で重要なのは、後鼻漏、喉頭アレルギー、気管支異物、そして内科との境界領域にある逆流性食道炎などである。
今回、後鼻漏と慢性咳嗽をきたした症例について、文献的考察を加え報告する。
症例は68歳、女性。2ヶ月前からの湿性咳嗽を主訴に受診。「鼻汁がのどにたれる」「咳嗽は夜間憎悪」などの訴えを伴っていた。胸部レントゲンで異常所見を認めず。副鼻腔レントゲンで両側の上顎洞に陰影を認めるとともに、咽頭ファイバーで上咽頭に粘弾性の高い後鼻漏を認めた。鼻処置にて後鼻漏を吸引除去。マクロライド系抗生剤および去痰剤の内服により2週間目には咳嗽が軽快、4週目には後鼻漏が軽快し経過は良好であった。