研究課題名
(和文)HBV・HDV共感染による肝発癌機序の解明
(英文)Elucidation of mechanisms how HBV and HDV coinfection promotes hepatocarcinogenesis
30年度の研究交流活動
共同研究の内容:
HBV感染により、正常肝は慢性肝炎から肝硬変へと変化し、さらに肝癌が発症する。一方HDVは、一本鎖のRNAウイルスであるが、HBVの存在下でないと感染が不可能な不完全ウイルスである。そのため肝臓へのHDVの単独感染は不可能であり、HBVとHDVとは必ず共感染する必要がある。臨床的にHBVとHDVの共感染患者は、HBV単独感染患者と比べて、肝線維化の進展が早期であり、肝癌発生率が高く、さらに肝癌の悪性度が高い事が報告されている。HDVの感染が肝線維化、肝発癌を促進していることが考えられるが、その分子生物学的機序は不明である。モンゴルではHBV感染患者の約70%、ベトナムではHBV感染患者の約10%がHDVに共感染している。本研究においては、HDV感染率が極めて高いモンゴルとベトナムにおいて、HBV感染を背景にした肝硬変・肝癌患者とHBVとHDV共感染を背景にした肝硬変・肝癌患者に関して、肝組織(非癌部、癌部)の核酸(DNA、RNA)を次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子発現解析及び遺伝子塩基配列解析を行う。これらの解析を通して、HDV共感染による肝線維化・肝癌促進機序の分子生物学的機序の解明を行う。モンゴル、ベトナムでは患者からの検体収集を行い、検体を金沢大学へ送付して、金沢大学において次世代シークエンサーを用いた解析を実施する。
進捗状況の確認・共有の方法や頻度:
平成30年度は、金沢大学、ハイフォン医科薬科大学、モンゴル国立医科大学及びベトナム、モンゴル政府における患者検体送付のために必要な手続きを完了する。12月ハイフォン医科薬科大学において開催予定の第4回国際アジア肝炎シンポジウムまでに必要な承認手続きの完了を目指す。金沢大学が窓口となり、2月に一回電子メールにて手続きの進行状況を確認する。
派遣・受入:
本研究に関連しては、派遣や受入の予定はない。
30年度の研究交流活動から得られることが期待される成果
本研究の実施には、モンゴルやベトナムからの患者検体の収集と日本への送付体制の確立が必須である。モンゴルやベトナムからの患者検体の海外への送付には、研究機関レベルのみならず各国政府レベルでの承認手続きが必要である。今年度はこれらの手続きを完了し、患者検体の日本への送付体制の確立が期待される。