研究課題名
(和文)HBV完全排除を目指した新規抗ウイルス療法の開発
(英文)Exploration of anti-HBV treatment to completely eradicate HBV
30年度の研究交流活動計画
共同研究の内容:
HBVに対する抗ウイルス療法の主流は、HBVのDNA産生を阻害する核酸アナログ製剤である。核酸アナログ製剤により、ウイルス量は減少するが、核内にはcovalently
closed circular DNA (以下cccDNA)が残存するため、核酸アナログ製剤を長期的に服用する必要がある。核酸アナログ製剤の長期服用により薬剤耐性ウイルスの出現や製剤によっては骨塩量の低下や腎障害などの副作用が懸念される。そのため、HBVを完全排除する新規治療法の開発が急務である。日本側拠点機関金沢大学のコーディネーター金子らは、これまでの解析から、4つの遺伝子(A,B,C,D)がHBVの複製に極めて重要な役割を果たしていることを明らかにした。しかしながらそれぞれの遺伝子が、どのようにHBV複製を制御しているかは不明である。本研究ではこれらの4つの遺伝子の中で、遺伝子Dに着目し、遺伝子DによるHBV複製機序の機構の解明、さらには遺伝子Dを標的として新規抗ウイルス療法の開発を行う。
この目的を達成するため、HBVが感染している培養細胞において、遺伝子Dの過剰発現系、発現抑制系を確立する。これらの条件下で、遺伝子DがcccDNAの保持を含めたHBV細胞内での複製過程のいずれに関わるかを明らかにする。さらに遺伝子Dの発現を効率的に抑制する分子(薬剤やsiRNAなど)を同定し、HBVを完全排除しうる新規治療法の開発を目指す。
進捗状況の確認・共有の方法や頻度:
中国拠点機関の四川大学から金沢大学から来日中の金沢の大学院生1名、モンゴル拠点機関のモンゴル医科大学から金沢大学へ来日中の金沢大学の大学院生1名が本研究を実施する。3ヶ月に一回、金沢大学で研究に関するmeetingを開催し、拠点機関コーディネーターの金子が研究の進捗状況を直接確認する。研究成果は、12月ハイフォンで開催予定の第4回国際アジア肝炎シンポジウムで発表し、参加者と成果を共有する。
派遣・受入:
S2「第4回肝疾患・分子生物学セミナー」で来日し、金沢大学を訪問する3名の若手研究者が滞在中に、研究を実施する。
30年度の研究交流活動から得られることが期待される成果
平成30年度は、HBVが感染している培養細胞において、遺伝子Dの過剰発現系、発現抑制系を確立し、そのHBV複製に与える影響を明らかにすることが期待される。また、本研究の実施を通して、S2「第4回肝疾患・分子生物学セミナー」で来日する各国若手研究者のHBV基礎実験手法の習得が期待される。