原発性脂質異常症(14疾患)遺伝子解析
DNAシーケンスを測定原理とする遺伝学的検査です。
本検査は原発性脂質異常症14疾患に関連する21個の遺伝⼦の塩基配列をNGSで調べ、検出された各バリアントについて各種データベースに登録された情報を付して報告します。さらに各バリアントの病原性について専⾨医の評価コメントが付きます。
本検査は次の⽬的に有⽤です。
・対象疾患の診断補助、治療⽅針の決定
・指定難病等に対する医療費助成の申請に求められる遺伝⼦検査
・病的バリアントが同定された発端患者の⾎縁者を対象としたカスケードスクリーニング
対象疾患
本検査は次の原発性脂質異常症に関連する遺伝⼦を調べます。
# | 疾患名 |
---|---|
1 | 家族性⾼コレステロール⾎症※ |
2 | LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)⽋損症※ |
3 | シトステロール⾎症※ |
4 | タンジール病※ |
5 | 原発性⾼カイロミクロン⾎症※ |
6 | 無βリポタンパク⾎症※ |
7 | 家族性低βリポ蛋⽩⾎症※ |
8 | 家族性Ⅲ型⾼脂⾎症 |
9 | CETP(コレステリルエステル転送蛋⽩)⽋損症 |
10 | リポ蛋⽩⽷球体症 |
11 | アポA-Ⅰ⽋損症 |
12 | カイロミクロン停滞病(アンダーソン病) |
13 | 原発性⾼HDL⾎症 |
14 | 低TG⾎症 |
※は指定難病です
検査⽅法
- 2mLの⾎液を採取します。
- ⾎液からゲノムDNAを抽出し、対象遺伝⼦のタンパク質をコードするエクソン領域とそれに隣接するイントロン領域について、NGSを⽤いて塩基配列を決定します。
- 得られた塩基配列はヒトゲノムリファレンス配列(GRCh38/hg38)と⽐較し、低出現頻度のバリアント(⼀塩基置換や短い塩基配列の挿⼊/⽋失)を検索します。
対象遺伝⼦
ABCA1、ABCG5、ABCG8、ANGPTL3、APOA1、APOA5、APOB、APOC2、APOC3、APOE、CETP、GPIHBP1、LCAT、LDLR、LDLRAP1、LIPG、LMF1、LPL、MTTP、PCSK9、SAR1B
報告内容
検査結果報告書
検出されたバリアントの⼀覧と各種データベースに登録されている各バリアントの情報
専⾨医評価書
提携する専⾨医による各バリアントに対する病原性評価
家族性⾼コレステロール⾎症(FH)
原発性脂質異常症のうち、罹患者が最も多いのが家族性⾼コレステロール⾎症(Familial hypercholesterolemia, FH)です1)。Low density lipoprotein receptor(LDLR)関連遺伝⼦の異常が原因の遺伝性疾患で、高LDLコレステロール血症や腱⻩⾊腫、早発性冠動脈硬化症を発症します。健常者と⽐べてヘテロFH患者の冠動脈疾患リスクは、臨床症状が乏しい場合で3倍以上、症状がある場合には11倍以上と報告されています2)。また、FHホモ接合体患者は冠動脈疾患リスクが極めて⾼いため、国の指定難病となっています。
⽇本において、FHヘテロ接合体患者は200〜500⼈に1⼈、FHホモ接合体患者は100万⼈に1⼈以上と推定されており、25万⼈以上のFH患者がいると推定されています3)。⼀⽅で、遺伝⼦ベースでのFH診断率は1%未満と報告されており、FHの積極的な検査が求められています4)。
臨床的にFHと診断された487⼈を対象に本検査を実施した試験では、334⼈(68.6%)で病的バリアントが検出されました5)。
関連⽂献
1) ⽇本動脈硬化学会編(2017) 家族性⾼コレステロール⾎症診療ガイドライン2017
2) Tada, H et al. (2017) Impact of clinical signs and genetic diagnosis of familial hypercholesterolaemia on the prevalence of coronary artery disease in patients with severe hypercholesterolaemia. Eur. Heart. J. 38, 1573-1579.
doi:10.1093/eurheartj/ehx004
3) Mabuchi et al. (2011) Molecular genetic epidemiology of homozygous familial hypercholesterolemia in the Hokuriku district of Japan. Atherosclerosis, 214, 404-407.
doi: 10.1016/j.atherosclerosis.2010.11.005
4) Nordestgaard et al. (2013) Familial hypercholesterolaemia is underdiagnosed and undertreated in the general population: guidance for clinicians to prevent coronary heart disease. Eur. Heart. J., 34, 3478-3490.
doi:10.1093/eurheartj/eht273
5) Tada, H et al. (2019) Rare and deleterious mutations in ABCG5/ABCG8 genes contribute to mimicking and worsening of familial hypercholesterolemia phenotype. Circ. J., 83, 1917-1924. 83, 1917-1924.
doi: 10.1253/circj.CJ-19-0317